個人再生の最低弁済額と清算価値保障の関係

「個人再生の最低弁済額とは?」
「清算価値保証原則って何?」
個人再生とは、借金を整理する債務整理の手段の一つで、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10まで圧縮してもらい、それを原則3年間で支払うという手続きのことです。また、住宅ローンの残った自宅を残せるというのも、個人再生の大きなメリットでしょう。ただし、個人再生には「最低弁済額」と呼ばれる「最低でもこれだけの金額は返済してくださいね」という基準額が定められています。たとえば、借金が100~500万円までの場合には、100万円まで減額され100万円が最低弁済額となります。ちなみに、借金が100万円以下の場合には全額支払う必要があります。
いっぽう、個人再生には「清算価値保証原則」と呼ばれる「最低でも清算価値(あなたが所有するすべての資産を現金に換えた場合の合計金額)よりも多い金額を、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)に返済しなければならない」というルールもあります。たとえば、あなたが300万円の借金で個人再生すると、通常であれば弁済額が100万円に圧縮され、これを3年間で返済していくことになるのですが、売却すると300万円の価値になる車を所有していた場合には、300万円を3年間で返済しなくてはなりません。
以上のように、個人再生して計画弁済額(個人再生して最終的に支払う借金額)がいくらになるかは人によって異なるため、こうした要件をきちんと把握しておく必要があります。そこで今回は、個人再生を検討されている人に向けて、個人再生における最低弁済額と清算価値保証の関係について説明したいと思います。

★個人再生における清算価値保障原則とは
個人再生をして借金が減額された後、支払わなくてはいけない金額は、冒頭で軽く説明した最低弁済額と清算価値のどちらか多い方となります。本章では、清算価値と清算価値保証原則について詳しく解説します。

●清算価値とは
清算価値は、一言で言うと「あなたが所有するすべての資産を現金に換えた場合の合計金額」のことです。具体的には、自宅や車、保険の返戻金や銀行口座の預貯金、株式などがこれに該当します。同じ債務整理の手段である自己破産を行うと、清算価値がカード会社に分配されることとなります。また、個人再生においては、最低でもこの清算価値以上の金額を支払うという義務があります。

●カード会社を守る「清算価値保証原則」というルール
個人再生には「清算価値保障原則」と呼ばれる、最低でも清算価値以上の金額を返済する必要があるというルールがあります。その理由は、あなたにお金を貸したカード会社の利益を守るためです。したがって、清算価値保障原則とは、個人再生手続きの再生計画において、あなたがカード会社に対して清算価値以上の返済を保障するという原則ともいえるでしょう。つまり、個人再生して借金を減額し住宅の処分も免れたとしても、少なくともあなたが保有する財産以上の金額はカード会社に支払う必要があるということです。
民事再生法(経済的に問題を抱える人の事業または経済生活の再生を目的とした法律)に基づく裁判手続きにおいては、カード会社は最低でも「あなたが自己破産した場合よりも、多くの金額を受け取れる」必要があるとされています。その理由は、カード会社から見て、あなたが個人再生をしても自己破産以上のメリットがないのであれば、認める必要がないからです。たとえば、あなたが自己破産して自宅や車などの財産をすべて処分した方がカード会社に多くの金額が分配される場合には、カード会社にとってはあなたが自己破産してくれた方がより多くのメリットを得ることができます。よって、このようなことが起きないように、民事再生法で「清算価値保障原則」が定められているのです。
なお、民事再生法174条2項4号において、清算価値保障は次のように定められています。
“裁判所は次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする”
→再生計画の決議が再生債権者(カード会社のこと)の一般の利益に反するとき
ようするに、清算価値保障原則を満たさない計画弁済額の再生計画の場合には、「再生債権者の一般の利益に反する」こととなるため、裁判所が再生計画を認可しないということになります。こうなると、借金の減額はできなくなり、個人再生の手続き自体が無効になってしまいます。ただし、実際には、ほとんどの個人再生の手続きにおいて、清算価値保障は大きな問題にはなりません。なぜなら、個人再生する人の多くは多額の借金を抱えており、大きな財産を持っていることはレアケースだからです。

●住宅ローンはどうなる?/清算価値の対象になる財産
個人再生で対象となる財産は、あなたの所有物すべてが対象になるわけではありません。たとえば、現金(99万は手元に残る)や20万円以上の預貯金、保険解約返戻金などがこれに該当します。そのいっぽうで、「自由財産」と呼ばれる生活に必要な最低限の家財道具や20万円以下の車などは、差し押さえが禁止されています。
では、具体的にどんなものが財産に該当するのか、横浜地方裁判所へ提出する「清算価値算出シート」を参考に下記にリストアップしましたので、参考にしてみてください。
1:現金
現金は、手持ちの現金から99万円を控除した残額となります。
2:預金・貯金
合計金額が20万円を超える預金、貯金の全額が対象となります。
3:貸付金・過払い金
貸付金、過払い金は回収可能な見込み額となります。
4:積立金等
積立金を担保とした貸付金がある場合には、その金額を控除した残額が対象となります。
5:退職金見込み額
退職金見込み額は、通常1/8が清算価値に該当します。ただし、近くに退職が決定している場合には、退職金の1/4対象となります。
6:保険解約返戻金
合計金額が20万円を超える保険解約返戻金がある場合には、全額が対象となります。
7:有価証券(時価)
株券、手形、小切手、商品券といった、あなたの財産権を証明する証書の合計金額となります。
8:自動車・二輪車(時価)
合計金額が20万円超える自動車やバイクは、すべて対象となります。なお、所有権が留保されている場合は、時価からローン残額を控除した残額が対象となります。
9:高価品等(時価)
合計金額が20万円超える高級腕時計や高級家具などが対象となります。
10:不動産(時価)
抵当権(カード会社が住宅ローンの担保として住宅の所有権を持つことで、ローンの返済が滞った場合に売却して借金を回収できるという権利)が設定された不動産が対象となります。住宅ローンの残った自宅なども対象となり、その場合、自宅の評価額から住宅ローンの残高を控除した残額が対象となります。

★個人再生における最低弁済額とは
「最低弁済額」とは、借金の一部を帳消しにする代わりに、最低これだけは返済するようにと法律で定められた返済金額のことです。

●最低弁済額の基準
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者再生」という2種類の手続きがありますが、通常は「小規模個人再生」で手続きが進められることがほとんどです。どちらの個人再生を選択するかによって最低弁済額の基準も異なりますので、以下で説明していきます。

・小規模個人再生
「小規模個人再生」とは、もともとは個人事業主を対象にした個人再生の手続きでしたが、現在では個人再生する人のほとんどが行う手続きとなっています。「給与所得者等再生」との大きな違いは、借金の圧縮率が大きい点です。
小規模個人再生における最低弁済額は、借金総額の1/5~1/10となるのが一般的です。
最低弁済額の詳細な基準は以下のようになっています。(ただし、住宅ローンは除く)
・~100万円    →借金全額を支払う
・100~500万円   →100万円を支払う
・500~1,500万円  →借金総額の1/5を支払う
・1,500~3,000万円 →300万円を支払う
・3,000~5,000万円 →借金総額の1/10を支払う
小規模個人再生では、原則3年間で最低弁済か清算価値のいずれか高い方を支払うことになります。
たとえば、借金は800万円ですが、300万円の高級車を保有していたという場合には、
・最低弁済額:800万円 × 1/5 = 160万円
・車の清算価値:300万円
となり、清算価値の方が高くなります。
したがって、300万円3年間で支払うことになるわけです。

・給与所得者再生
「給与所得者等再生」は、もともとはサラリーマンなどの会社員を対象にした手続きでしたが、現在ではあまり使われません。
給与所得者等再生で減額される借金額は、
・2年分の可処分所得(あなたの収入合計から税金や生活費などを差し引いた金額)
・小規模個人再生の最低弁済額
を比較し、いずれか多い方の金額となります。
たとえば、借金が800万円で月収35万円。税金、生活費が20万円という人の場合には
・2年分の可処分所得額:(35万 – 20万)× 24ヶ月 = 360万円
・最低弁済額:800万円 × 1/5 = 160万円
となり、可処分所得額の方が高くなります。
したがって、360万円3年間で支払うことになるわけです。

★個人再生における計画弁済額の決め方
最後に、個人再生をした場合の最終的な返済額となる「計画弁済額」の決め方についてまとめましょう。

・小規模個人再生を行う場合は、「最低弁済額基準」、「清算価値」のいずれか多いものが計画弁済額となる。
・給与所得者等再生を行う場合は、「最低弁済額」、「清算価値」、「可処分所得の2年分」の
いずれか多いものが計画弁済額となる。

★まとめ
・清算価値とは、あなたが所有するすべての資産を現金に換えた場合の合計金額のこと。
・個人再生には「清算価値保障原則」と呼ばれる、最低でも清算価値以上の金額を返済する必要があるというルールがある。
・「最低弁済額」とは、借金の一部を帳消しにする代わりに、最低これだけは返済するようにと法律で定められた返済金額のこと。
・小規模個人再生における最低弁済額は、借金総額の1/5~1/10となるのが一般的です。
・小規模個人再生を行う場合は、「最低弁済額基準」、「清算価値」のいずれか多いものが計画弁済額となる。
・給与所得者等再生を行う場合は、「最低弁済額」、「清算価値」、「可処分所得の2年分」の
いずれか多いものが計画弁済額となる。

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